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ゼロから考える流星質量
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SonotaCo
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Thu Mar 27, 2008 5:39 pm    記事の件名: ストゥーロフのモデル試算 引用付きで返信

面白そうだと思うと止まらないのは困った性格です Embarassed
ストゥーロフのモデルを今回の火球で試算してみました。
ストゥーロフのロシア語の頭文字の c を使って c-model と呼ぶことにしました。
適用に当たっては、計算可能な範囲の始点を定める必要があり、
これを高度で指定することとし、 He kmとしました。(青の縦線がその高度となる時刻です。 c-model はそれ以降について計算しています)
今回は前半減速がまったく観測できていないので、高度 50km以下をモデルの対象としました。
βは実測することもできるかもしれないですが、ここでは指定することとしました。
あと、初期速度を指定高度の実測値そのままとすると 計算開始点で高度が無限大になるので、突入速度と観測開始速度とに差があったとして、これを今回0.9km/h としました。
c-model では速度を与えるとその時の高度と質量が計算できます。
で、高度グラフにはc-modelで計算した高度を追加しました。
なんと、観測と非常によく一致しました Shocked 。左上のグラフです。

で、質量ですが、これは βの設定によりある程度変化します。
ここでは 先の力学的質量計算となるべく一致するようにしました。
その際の βは0.7 となりました。
結果、 c-model によれば、初期質量 304g, 最終質量 37g となりました。
ちなみに、β=1.0 とした場合は初期質量 502g, 最終質量 25g となりました。
c-model による質量は減速部で大きく質量が減るのが特徴的です。
でも、高度の予想が綺麗に一致し、後半の質量変化はとても自然です。
これに比べるとこれまでの光学的計算方法は随分不自然に見えてきました。
------
訂正です。当初。運動エネルギーのすべてが流星を昇華させることに費やされているとしている解釈していましたが、勘違いで、そんなことはありませんでした。



Image1.png
 説明:
c-model による質量推定
(力学的質量とできるだけ一致させたケース)
 ファイルサイズ:  70.98 KB
 閲覧数:  7571 回

Image1.png




最終編集者 SonotaCo [ Sat Mar 29, 2008 8:20 am ], 編集回数 1 回
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Fri Mar 28, 2008 5:44 pm    記事の件名: 観測結果から.... 引用付きで返信

ゼロからの再スタートということで、やっとスタートラインです。
まず、2007年のSonotaCo Networkの観測結果と3/1火球のデータをグラフにしてみました。
グラフは 観測速度-発光高度 のグラフです。
青線と赤線は 2007年に観測された18650個の流星についての発光開始高度と消滅高度の速度毎の平均値です。
灰色の領域が検討対象領域で、これをいくつかの領域に分割したモデル毎に処理しないといけないと思います。
(灰色の領域を突き抜けるディープインパクトももちろん可能性としてはあるのですが、とりあえず考えないことにします)

今回の火球(空色)が高度50km以上で減速が観測できていない点が大問題です。
過去の多くの研究によっても高高度の減速は殆ど観測されていないことからも
高高度では力学的モデルは使用できず、なんらかの光学モデルを使用せざるを得ないです。
一方、減速が明瞭に観測される50km以下では ストゥーロフなどの 空力モデルは一応の説明しているように思います。
これは衝撃層ができる領域では非常に細かい定量的分析が進んでいるからだと思います。

図からわかるように、流星の大部分が光学モデルしか適用できない領域にあります。
落下隕石の質量予測には 空力モデルの研究は欠かせませんが、
大部分の流星の質量推定には光学モデルの進歩も欠かせないと思います。
------
ためしに、今回の火球で 高度50kmで光学的質量とc-modelによる質量が一致するように光学パラメータを調整してみました。雰囲気は出ているような気がします。



Image1.png
 説明:
モデルの可能性
 ファイルサイズ:  21.78 KB
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Image1.png



Image9.png
 説明:
高度50km で光学からc-modelに乗り換える例
 ファイルサイズ:  71.19 KB
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
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記事日時: Fri Apr 04, 2008 5:13 pm    記事の件名: 流星と大気との衝突のメカニズム 引用付きで返信

花見をしながら、流星と大気との衝突のメカニズムに対する私の理解を整理してみました。
流星の経路は次の4つの区間に分かれると思います。
境界はかなり明瞭で、区間によって性質が大きく変わると思います。

1 希薄大気の極超音速飛行 (高層フライト)
・加熱により発光する。昇華などにより質量を減らす。
・衝撃波層が殆どなく、ごくわずかな圧力しか発生せず、流星は殆ど減速しない。

2 発光と大きな減速を伴う極超音速飛行 (中層フライト)
・加熱により発光、昇華し、質量を減らす。
・衝撃波層をもち、強い圧力を発生し、流星は大きく減速する。

3 超音速ダークフライト
・発光、昇華はなく、質量は変わらない。
・Cd値はほぼ1.0で大きく減速する。
・風や地球の自転の影響を殆ど受けない。

4 亜音速ダークフライト
・発光、昇華はなく、質量は変わらない。
・Cd値は0.1〜1.0で速度を徐々に落とす。
・地球大気の自転運動や地上風の影響を受ける。

1->2の境界(衝撃層発生高度)
大気が分子的な粘性気体から非粘性気体へ変化する高度
半径2mの球体の場合 75〜90km (文献1)
半径数cm以下の場合 50km (20080302火球)
(大きい流星はより上空から減速する)

2->3の境界(昇華終了高度)
速度が低下して発光と質量低下が終わる高度
数10g以下の場合 25km (20080302火球)
(重い流星はより低空まで光る)

3->4の境界(自由落下高度)
元々持っていた突入速度成分を失い、風と重力による自由落下になる高度
数10g以下の場合 20km (20080302火球)
(重い流星はより低空まで直進する)

備考
・1.は詳細なメカニズムは不明
特に、発光量と質量損失速度の関係は殆ど明らかでない
これまでこの領域での抵抗係数は理論から Cd=2.0 とされていたが、
観測からは、大幅に小さい値である可能性が高い。
柔らかい物質では昇華以外に本体の運動量を殆ど変化させず質量を減らすメカニズムがある可能性もある。

・2.は詳細に解析されているものの、設定すべきパラメータが複数ある。
-流星密度、抵抗係数、質量と断面積の関係、弾道係数、質量減少パラメータ。
-弾道係数は速度あるいは高度変化の実測から推定できる

・爆発の影響は未だ考慮されていない
通常2の中で発生する。
20080302火球では爆発後しばらくの間空気抵抗が減る現象が観測されている。
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Sat Apr 05, 2008 10:27 pm    記事の件名: オリジナルモデル 引用付きで返信

高層の速度低下が殆どない減量過程を説明するために、
大気分子と流星との反発係数 e を導入したモデルを作り、
数値シミュレーションしてみました。

高層では普通 e=1.0 つまり完全弾性衝突すると仮定している
ようですが、完全弾性衝突では衝突によるエネルギーロスがない
ので、発光や昇華するエネルギーの出所がないように思います。

素人考えなのですが、発光、昇華するということは、e < 1.0で
そこで発生する衝突の熱エネルギーの何%かが流星を昇華させて
いるとしました。

式を眺めていて思ったのですが、このような分子個々が衝突する
とする領域では 反発係数 eと 抵抗係数 Cdは 関係があり、
Cd = 1.0+e としてよさそうなので、Cdはパラメータから除外しました。

で、e と それによって発生したエネルギーの何%が昇華に使用
されるかという熱伝達係数 ht を用いて 任意の初期値から
高度、速度、質量の減少をシミュレートするプログラムを
作ってみました。
以下が結果です。
緑の線が実測結果で、赤がシミュレート結果です。
e=0.0, ht=0.17 つまり完全非弾性衝突で、その時発生するエネルギー
の17%が 流星の昇華に使われるとしたものです。

高度h, 速度v はよく実測と一致する線が得られます。
質量mは何が本当かわからないですが、他の方式と似た結果も得られます。
ちなみに、光力係数を使って発生した熱量に比例した光束が出る
として等級も計算してみましたが、これは全くカーブが合いません。

高層での速度低下が殆ど発生せず、高度、速度カーブが実測とよく一致
したのは大変嬉しいのですが....
やはりこのような単純な力学的モデルでは高層の強い発光を説明するのが難しい
ということが良くわかりました。

もうすこしシミュレーションで遊んでみます
---------------------
結局、ストゥーロフのモデルも私のモデルも般的な力学的モデルも、値の与え方と計算方法が違うだけで、空気抵抗で速度と質量を失う計算は同じことをやっているようです。
従って、設定によってほぼ同じ答えがでることがわかりました。



Image1.png
 説明:
赤線がシミュレート結果です。
 ファイルサイズ:  53.88 KB
 閲覧数:  7388 回

Image1.png



Image1.png
 説明:
ストゥーロフのモデルに値を合わせた例
 ファイルサイズ:  60.04 KB
 閲覧数:  7364 回

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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Thu Apr 10, 2008 8:53 pm    記事の件名: 2流星の比較 引用付きで返信

自前のモデルで遊んでいます。
パラメータの変化で結果がどのように変わるのか、ようやく土地感が出来てきました。
以下は、力学的質量(密度と抵抗係数のみ仮定し、測定加速度から質量を計算するもの)に他の結果をほぼ一致させたものを3/1-2の2つの火球で比較したものです。
仮定密度は3700kg/m^3です。この設定によって全ては大きく変わります。
いずれにしても、高度40km〜30kmの範囲では各種推定方法をほぼ一致させることができるのが興味深いです。

040502は山梨に落ちた可能性のあるやつで、224945は福島上空のものです。
推定される質量は山梨のものが数十倍大きいのですが、絶対等級は福島の方が明るいです、速度はほぼ同じなので、突入角の差が原因かも知れません。

興味深いものは、高度の比較です。山梨, 福島の順で書くと
急減速の開始高度 50km , 51km
最大質量損失高度 39km , 46km
最大減速高度 34km , 38km
となっています。
amagの変化が50km以上ではモデルの発熱量と全く合わないのは共通です。

224945は爆発が殆どなく、速度や等級の変化が綺麗に測定できています。
このような例がもう少し集まれば何か見えて来るかもしれません。
気長にやっていきたいと思っています。



Hgraph.png
 説明:
縦軸に高度をとったグラフ
 ファイルサイズ:  28.21 KB
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Hgraph.png



Tgraph.png
 説明:
横軸に時間をとったグラフ
 ファイルサイズ:  33.68 KB
 閲覧数:  7306 回

Tgraph.png


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司馬康生



登録日: 2005.11.26
記事: 2161
所在地: 明石市

記事日時: Sat Apr 12, 2008 11:34 pm    記事の件名: すごいですねぇ 引用付きで返信

わずかな時間にこれだけのことを進めていただいて感激です。
いろいろ細かいところを検討しなければなりませんが、、、、

お書きのFxはやはり??という印象です。
「流星の昇華蒸発に使われた力と・・・」
これは「力」ではなく「エネルギー」ではないでしょうか。
また、高空での減速の問題は、重力の無視との関連ではどうでしょうか。
上空では結構空気抵抗と重力が拮抗していると思います。
もっとも、TV観測ではそれらの変化レベルより誤差レベルが1桁以上大きいかもしれない、という不安は感じます。

私もこれまでの幾つかの計算を経験して、ずいぶん隕石落下計算は怪しいという自覚があります。
数値をいろいろ変えても、それらしい結果が得られます。
特に抵抗係数CDは、影響が大きいです。
できるだけ、単一の計算例を示さず、多数の例を示したいのは、その怪しさ故です。
従って、多くの方がいろいろな結果を出すことは、より客観的な結果に近づく可能性があり歓迎であります。

例えば、1962−1967年に行われた人工流星の実験では、光力係数τを求めています。材質(鉄 or ニッケル)、質量、速度が正確にわかっている11例の実験で、結果のτが上下1桁も違っているのは驚嘆です。
材質も形も不明の上、落下途中にどんな分裂を起こしていたかわからない流星物質では、求めた光学的質量が上下1桁近く違っていても、いいじゃぁないの、という感じです(おおらかに行きましょう!)。
良く引用される数値、「地球上には1年間に▲■個の隕石が落下している」などと言う元データは、たいていカナダの観測結果の引用です。彼らの質量見積もりにも癖があり、それと比べると私の計算質量は常に小さい質量という傾向です。他に同様の観測を行い、同様の結果を報告した人が居ないために彼らの結果が「常識」のように扱われることがあります。しかし、他にも結果が出てきたならばもっと違う数値が公表されて当然と予想します。

D.ReVelle(1979 J.Atmospheric &Terrestrial Phys)を私はずいぶん参考にしたのですが、
ここでは、光力係数、熱伝達係数を定数と扱わずに、観測と整合させるための変数として隕石落下の観測例に対して説明しています。実際に定数扱いすることには無理があるのは確かですが、一般的にはこのような詳細な計算は困難でしょう。また、この計算モデルでは破砕の効果は考慮外です。それでもこの論文はAPPENDIXを見るだけでも価値があると思います。
また、ReVelleは光力係数を、流星の持つ初期エネルギーに対する割合で表記しており、多く使われるτよりは明確な物理的意味を持った数値表現であることから、私はこちらを支持しています。実際に、私のプログラムで入力しいるτはReVelleに倣ってエネルギー比で書いています(τと書くとまずいかも)。

書き始めると問題山積ですが、とりあえず今日はこれまでとします。
私の理解も不十分な所があるかと思います。
これを改善のチャンスと考えたいと思います。
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Sun Apr 13, 2008 9:21 am    記事の件名: Re: すごいですねぇ 引用付きで返信

コメントとてもありがたく思います > 司馬さん

砂漠の一人旅で、土地の長老にあった気分です。

思えば、
瞬時の速度を実際に測ることができるようになった
というのが、今回質量を考えるようになったきっかけです。

速度誤差は平坦な部分のばらつきから見ると1%程度と思っています
(シミュレーションとは5%程度の差があるよう見えることもあります)。

何も知らない頃は、速度とその変化がこの精度で測れれば、
質量もある程度の精度で測れるはずと思っていました。

しかし、実際に色々やってみると、とんでもないことで、唖然とすることばかりですね。

Fx は今判っていない要素を全て押し込んだつもりでした。
当初必要になるかと期待したのですが、それ以前に、判っていると思っていた抵抗係数や密度などに
あまりにも幅があり、Fxが負の可能性も出てきて、今はとてもFxを議論する段階ではないと悟りました。
とりあえず、Fxを考えるのはやめることにします(アインシュタインの宇宙項みたいです Embarassed )。
破砕の問題があるので、抵抗係数、断面積、流星密度 が複雑な関係になっており、その辺をなんとか
しないと先には進まない感じがしています。

司馬康生 wrote:
また、高空での減速の問題は、重力の無視との関連ではどうでしょうか。
上空では結構空気抵抗と重力が拮抗していると思います。
もっとも、TV観測ではそれらの変化レベルより誤差レベルが1桁以上大きいかもしれない、という不安は感じます。


実測例では、高空にあるのは2、3秒で、この間の重力加速は大きくとも0.03km/sです。
速度測定誤差は1%としても 0.2km/s 程度なので、やはりとても重力が測れるレベルには至っていません(もっともモデルでは全て重力を考慮しています)。
しかし、力学的モデルでは、空気抵抗によって、この間にも1桁大きい0.5km/sとか1km/s程度の減速があるはずのように思います。
20080302_040502ではこれが全く測れなかったので、別のメカニズムの必要性を感じましたが、
20080301_224945ではこれが測れているようにも見えます。
もう少し実例が溜まれば、熱伝達係数の変化の問題に帰着できるかもと思うようになりました。

参考文献紹介ありがとうございます。勉強してみます。

司馬康生 wrote:
また、ReVelleは光力係数を、流星の持つ初期エネルギーに対する割合で表記しており、多く使われるτよりは明確な物理的意味を持った数値表現であることから、私はこちらを支持しています。

ほぼ同感です。
少し意味が違いそうですが、私もシミュレーションモデルでは、非弾性衝突により発生する熱エネルギーの何%が昇華に使われたかという係数を導入しました。
これを10〜20%とすると中高度以下でもカーブが他の予測と綺麗に一致するのが面白いと思っています。

何よりも、精密な速度の測定例を増やしていくことが大事と、今は思っています。
----------
追記です。
大気密度は指数関数的に変化するので、高空では空気抵抗が指数関数的に小さくなるわけなので、高空のどこかで空気抵抗と重力が拮抗する高度があるのは間違いないと思います。
しかし、いずれにせよその辺での力は微細で、今の精度では関係ない領域のような感じがしています。
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
所在地: 139.67E 35.65N

記事日時: Mon Apr 14, 2008 10:58 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その1 -- 初期質量の違い) 引用付きで返信

速度や質量の変化が、パラメータの違いでどのように変わるのかを
モデルによるシミューションをしてグラフにしてみました。
モデルのパラメータは以下です。
Me: 初期質量 kg
Ve: 初期速度 km/s
He: 昇華開始高度 km
EA: 突入角 deg
Ds: 流星物質密度 kg/m^3
Cd: 空気抵抗係数
ht: 熱伝達係数
Q: 流星物質昇華熱 cal/g
モデルでは、高度Heで質量Meの物質が突入角EA,速度Veで大気に突入したとし、
抵抗係数 Cd と球体としての断面積と当該高度の大気密度から計算した空気抵抗を受け減速し、
その際の非弾性衝突により発生する熱エネルギーを ht倍したものが流星物質の昇華に使われるとして、
数値計算により逐次高度、速度、質量の変化を求めました。
大気密度は高度に応じたものを使用していますが、他のパラメータは経路中は変化しないものとしています。


最初は初期質量の差による違いです。
初期質量として4倍ずつ変化さた、50g,200g,800g を計算しています。

流星はより重いとより低空まで達し、減速は遅れ、より低空まで速度を維持します。
これは容易に想像できますね。

速度低下曲線は丁度時間軸方向にシフトしたように変化します。
形や傾きが変わらない点は興味深いです。

しかし、初期質量を4倍変えても経路の差は僅かです。
このことから、経路は初期質量の違いに鈍感だということがわかります。
逆に見れば、これは 質量推定誤差を小さくするのは難しい ということを意味していると思います。



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 説明:
初期質量の差
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登録日: 2004.08.07
記事: 12653
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:02 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その2 -- 初期速度の違い) 引用付きで返信

次に 初期速度の差による違いを見てみます。
初期速度 を 10% ずつ変えてあります。
この僅かな違いは経路を大きく変えるようです。

高速流星は、早く昇華が始まり、一気に速度と質量を減らし、最終質量も小さくなります。



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 説明:
初期速度の差
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記事: 12653
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:03 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その3 -- 初期高度の違い) 引用付きで返信

3つめは 初期高度の差による違いを見てみます。
初期高度 を 10% ずつ変えてあります。
この差は、減速開始時刻を変えるだけで、殆ど同じカーブを時間軸でシフトしたものになります。
高高度での速度と質量の変化が僅かなので、変化の様子には初期高度は殆ど関係ないと言えると思います。



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 説明:
初期高度の差
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:04 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その4 -- 突入角の違い) 引用付きで返信

4つめは 突入角の差による違いを見てみます。
突入角とは、流星経路の地平線に対する角度です。10% ずつ変えてあります。

突入角の差は速度の差と少し似た違いを生ます。
突入角が大きいものは、早く昇華が始まります。
しかしながら、初期速度の差に比べて、速度変化の傾きの違いは少し少ないです。
また、初期速度が違う場合には最終質量が大きく違ったのに対して、
突入角が違っても、最終質量は殆ど同じになる点が興味深いです。



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 説明:
突入角の差
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:06 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その5 -- 密度の違い) 引用付きで返信

5つめは 流星物質の密度の差による違いを見てみます。2倍と1/2を比較しています。

密度の差は初期質量の差とよく似た違いとなります。
密度が高いものは、昇華が遅く、より低空に達します。
しかし、密度が違っても、最終質量は殆ど同じになる点は興味深いです。



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 説明:
密度の差
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:07 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その6 -- 空気抵抗の違い) 引用付きで返信

6つめは 空気抵抗係数の差による違いを見てみます。50%ずつ変えて比較しています。

抵抗係数の差は独特の違いを生むようです。

高度変化の違いはかなり小さいです。

速度変化はタイミングと傾きに差が出ています。
抵抗係数が大きいものは僅かに早く速度低下が始まりますが、その変化は緩やかです。
抵抗係数が小さいものは速度低下の始まりが遅いですが、一気に大きく減速し、質量低下が顕著なので最終速度はより小さくなります。

質量をみると、
抵抗係数が大きいものはあまり質量が減らず、最終質量も大きいです。
これは抵抗係数が大きいと、早く減速してしまい、あまり燃えないということのようです。

抵抗係数の違いは、経路はあまり変化させませんが、最終質量を大きく変えます。
流星の破砕の影響は抵抗係数の増大と捉えるのが自然なような気がしています。
つまり、抵抗係数は経路中変化する可能性が高いわけで、
これも質量予測の難しさの1要因になっていると思います。



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 説明:
空気抵抗係数の差
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 11:09 am    記事の件名: 昇華過程シミュレーション( その7 -- 熱伝達係数の違い) 引用付きで返信

最後は熱伝達係数の差による違いを見てみます。50%ずつ変えて比較しています。
熱伝達係数は、発生する熱エネルギーの何%が流星の昇華に使用されるかという数値です。
昇華熱Q / 熱伝達係数ht が1gを昇華させるのに必要となる発生エネルギーです。
(Qの違いはhtの違いと同じ効果なので、ここではhtのみ変化させています)

熱伝達係数の差は、抵抗係数の差を逆にしたような違いですが、微妙に影響が違います。
熱伝達係数が大きいことは燃えやいことを意味しています。
熱伝達係数が大きいと、早く質量と速度の低下が始まり、最終的にもより低速かつ低質量になります。
抵抗係数の差が複雑な違いを生むのに比べると素直で分かりやすいです。


以上、7つのパラメータの差による 高度、速度、質量変化の違いを見てきましたが、
1つ1つはなんとなく理解できるものの、全体としては凄く複雑だというのが私の感想です。
通常、観測から Ve,He,EAの3つが分かります。これらから、Me,Ds,Cd,ht の4つを定めるのが力学的質量推定の問題です。

いかがでしょうか。



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 説明:
熱伝達係数の差
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記事日時: Mon Apr 14, 2008 1:14 pm    記事の件名: 高速流星は..... 引用付きで返信

初期速度を60km/sにしてシミュレートしてみました。
他の条件はこれまでと同じですが、
初期質量が200gあっても、1秒程で高空で燃え尽きてしまうという結果でした。
速度の減速は燃え尽きる寸前に僅かに発生するだけです。
観測で高速流星の減速が殆ど検出できないのが納得できます。
以下は質量の差をプロットしていますが、4倍の差があっても殆ど経路は変わらないので、この領域での力学的質量推定はやはり極めて困難なようです。

高速流星は、速度を殆ど落とすことなく急激に燃えます。
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高速流星で隕石が落下が可能となる条件は改めて別途算出してみます。
いずれにしても、燃え尽きずに地表に到達する程重い場合には速度が落ちていないため、大変なことになると思います。



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 説明:
初速60km/sの例 (差し替えました)
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最終編集者 SonotaCo [ Mon Apr 14, 2008 11:20 pm ], 編集回数 4 回
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